夜の浜辺。
江ノ島の街の灯りが、ぼんやりと海を照らす。
幾重にも、白波が生まれては姿を隠し…
また生まれては隠れてゆく。
右からドミノ倒しのように駆けてくる白い波と
左から同じスピードで駆けてくる白い波がぶつかってひとつになり
そしてまた消えてゆく。
その繰り返し。
昔、母が作ってくれたゼリーのような
ぷるん…とした波の上に
灯台の碧い灯りの道が、ゆらゆら…ゆらゆらり。
波と一緒に、私も
ゆらゆらり。
窓辺に腰掛けて
じっと耳を澄ます。
胸の扉が 開いてるのがわかる。
ピアニストの奏でる、大好きな歌のメロディー。
気が付いたら、涙の粒が
ころん…ころん…
と両の腕をつたってた。
空には冬の星座が痛いくらいに輝いて…
こんな風に心動かされながら一年を終えられることの幸せを
噛みしめる。
来年も、たくさん心を震わせられるかな。
震わせられる自分でいたいと思う。
それから…
今夜のように、穏やかな波のようでいたい…とも思う。